輸液の微量元素は基本的にモル(mol)で記載されています。ここでは、molからmgへ変換する方法(Feはμmolなのでそこから計算します)と、実際の高カロリー輸液(エルネオパNFやワンパル)には何mgの鉄が含有されているのか紹介していきます。
モル(mol)からmgに変換!高カロリー輸液の鉄(Fe)は何mg?
まず輸液の添付文書を確認します。鉄は元素記号ではFeなので、微量元素の欄のFeを確認します。エルネオパNFを例に上げると、2000mlで20mmolと記載されています。
molからmgへ単位変換する
手順は以下の順です。
① μmol → mol へ変換する ② mol → mg へ変換する
①μmol → mol へ変換する
μmol ⇔ mol 1000000μmol = 1mol 1μmol = 0.000001mol
エルネオパNF1000mlを例に考えてみましょう
エルネオパNF1000mlでFeは10μmolです。まずμmolをmolに変換します(①の式)
10μmol = 0.00001mol
エルネオパNF1000mlではFeは0.00001molであるということがわかります。
ここからいよいよmolをmgへ単位変換していきます。
2.mol → mg へ変換する
以下の式に当てはめてモル→mgへ変換していきます。
モル(mol/L)をグラム(g)に変える式 溶液1L中の溶質のg数 = mol/L × 溶質の分子量 溶液1L中の溶質のg数 = 0.00001mol × 55.845(鉄の分子量) = 0.00055845g = 0.00055845g × 1000 (g→mgへ変換) = 0.55845mg
エルネオパNF1000mlで約0.56mgのFeが含有しているということですね。エルネオパNFは2000mlで1日の栄養がとれるように作られているので、エルネオパNF2000mlで考えると、1.1mgのFeが体内に入ることになります。
輸液の鉄(Fe)量は何が基準?
輸液の微量元素量は基本的にESPENのガイドラインまたは、A.S.P.E.N.のガイドラインが基準になっています。ESPEN2009ではFeは1.0~1.2mgとなっています。それぞれの高カロリー輸液は以下に基づいています。
エルネオパNF :ESPENのガイドラインに基づいたFe量 ワンパル :ESPENガイドラインと、食事摂取基準の1日の基本的鉄損失量に基づいたFe量
食事摂取基準の鉄分量
食事摂取基準では鉄の推奨量は男性30-69歳で7.5mg、70歳以上で7.0mgになっています。
鉄は吸収率が低く、日本人で15%程度と言われています。7.5mgの15%は1.1mgなので、ESPEN2009と同程度の量になります。また、基本的鉄損失は1日平均0.96mgです、耐容上限量は30-49歳の男性で55mg、女性で40mgです。詳しく知りたい方は、食事摂取基準をご覧ください。
高カロリー輸液の鉄分量
高カロリー輸液であるワンパル(陽進堂)とエルネオパNF(大塚製薬)の鉄の含有量は以下の通りです。
エルネオパNF1号1000 | エルネオパNF1号1500 | エルネオパNF1号2000 | エルネオパNF2号1000 | エルネオパNF2号1500 | エルネオパNF2号2000 |
0.56 | 0.84 | 1.12 | 0.56 | 0.84 | 1.12 |
ワンパル1号 800 | ワンパル1号 1200 | ワンパル2号 800 | ワンパル2号 1200 | ||
0.49 | 0.73 | 0.49 | 0.73 | Fe (mgで表記) |
エルネオパNFは2000mlで各種栄養素が補給できるよう設計されているので、エルネオパNF(1号2号とも)2000mlで1.12㎎含有しています。ワンパルは1600mlで各種栄養素が補給できるよう設計されているので、(1号2号とも)1600mlで0.98㎎となっています。
まとめ
鉄のmol→mgへの変換方法についてまとめました。上記の方法を使えば、他の輸液や微量元素補給でも計算することが可能です。輸液にて栄養補給される場合に、この輸液にはどれだけ鉄が入っていたんだったっけ?と確認するときの参考になれば幸いです。他の微量元素についても同様の考え方で計算すると算出できます。
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