高カロリー輸液のみで栄養を補給している場合、食事でいえば何mgのビタミンが摂取できているのか知りたいと感じることもあると思います。そこで、輸液におけるビタミンB6はどれにあたるのか、ビタミンB6の単位について、輸液のビタミンB6の基準量はいくらなのか、実際に使われている高カロリー輸液には何mg含有されているのか紹介していきます。
高カロリー輸液の【ビタミンB6】の配合量は?
高カロリー輸液の添付文書からビタミンB6を探す場合、ピリドキシン塩酸塩がビタミンB6にあたります。ピリドキシンとしてという記載がある場合もあります。
エルネオパNFには2000mlで6.0mgピリドキシンとして含有しています。
ピリドキシン塩酸塩とピリドキシンとは?
ピリドキシンに塩酸塩がついたものが、ピリドキシン塩酸塩で、分子量が違います。食事摂取基準もピリドキシン量をビタミンB6として算出しています。
ピリドキシン塩酸塩1gは、ピリドキシンとして約823mgです。
分子量 | |
ピリドキシン塩酸塩 | 205.6388 |
ピリドキシン | 169.1778 |
ピリドキシン塩酸塩 → ピリドキシン 169.1778(ピリドキシン分子量)/205.6388(ピリドキシン塩酸塩分子量) =0.823 ピリドキシン塩酸塩1g = ピリドキシンとして約823mg
以上のようにして計算すると、算出できます。つまり、
ピリドキシン塩酸塩×0.82でピリドキシン量が出てきます。
ピリドキシン塩酸塩→ピリドキシン
ピリドキシン塩酸塩×0.82
=ピリドキシン量
輸液のビタミンB6は何が基準?
輸液のビタミン量の基準は、2000年にFDA(米国食品医薬品局)が発出したFDA2000処方が広まっており、これに準拠し作られたものが多いです。また、微量元素に関しては米国のA.S.P.E.N.(米国静脈経腸栄養学会)のガイドラインや、欧州のESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)のガイドラインを準拠し作られていることが多いです。
FDA2000処方ではビタミンB6は6mgとなっています。よく使われる高カロリー輸液である、エルネオパNFとワンパルもFDA2000処方に準じたビタミンを配合しています。
ビタミンB6の食事摂取基準
食事摂取基準ではビタミンB6の推奨量は成人男性70歳以上で1.4mg、成人女性70歳以上で1.2mgとなっています。食事摂取基準においてビタミンB6はピリドキシン量がビタミンB6として設定されています。
推定平均必要量
血漿中のPLP(ピリドキサール5‘-リン酸)濃度が低下した若年女性において、脳波パターンに異常がみられたという報告があります。これらの障害が観察されなくなる血漿PLP濃度が30nmol/Lであり、それを維持できるビタミンB6摂取量が推定平均必要量とされています。
また、ビタミンB6は、たんぱく質摂取量が増えると、ビタミンB6の必要量も増えます。
①PLP濃度30nmol/L維持できるビタミンB6量 →0.0014mg/gたんぱく質 ②ビタミンB6の相対生体利用率 →73% ①/② = 0.014/0.73
この値に、それぞれの年齢のたんぱく質の推奨量を乗じて、推定平均必要量が設定されています。
推奨量は推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値となっています。
欠乏症
ビタミンB6は、アミノ酸の異化やアミノ酸系神経伝達物質である生理活性アミンの代謝に関わっています。
ビタミンB6が欠乏すると、ペラグラ様症候群、脂漏性皮膚炎、舌炎、口角症、リンパ球減少症、などが起こります。
過剰症
通常の食事で、過剰症が発現したという報告はありません。しかし、ピリドキシンを大量に摂取した時(数gを数か月程度)に感覚性ニューロパシーという健康被害が観察されます。
耐用上限量
耐容上限量は60mg/日と設定されています。
これは上記の感覚性ニューロパシーという健康被害が観察されるためです。
しかし1日に100~300mgを4か月投与した実験では感覚神経障害が認められなかったという報告があるため、健康被害がでない摂取量を300mg/日と設定し、そこから不確実性因子を5として300÷5=60で60mg/日が耐容上限量に設定されています。
更に詳しく知りたい方は食事摂取基準を参照下さい。https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
それぞれの輸液の内容量
輸液にビタミンB6がどれだけ入っているか、ここでは高カロリー輸液のエルネオパNFとワンパルのビタミンB6量を表にしました。
エルネオパNF1号1000 | エルネオパNF1号1500 | エルネオパNF1号2000 | エルネオパNF2号1000 | エルネオパNF2号1500 | エルネオパNF2号2000 | |
ピリドキシン塩酸塩(mg) | 3.675 | 5.5125 | 7.35 | 3.675 | 5.5125 | 7.35 |
ピリドキシンとして(mg) | 3.0 | 4.5 | 6.0 | 3 | 4.5 | 6 |
ワンパル1号 800 | ワンパル1号 1200 | ワンパル2号 800 | ワンパル2号 1200 | |||
ピリドキシン塩酸塩(mg) | 4 | 6 | 4 | 6 | ||
ピリドキシンとして(mg) | 3.3 | 4.9 | 3.3 | 4.9 |
エルネオパNFは2000mlで各種栄養素が補給できる計算になっているので、エルネオパNF(1号2号とも)2000mlでピリドキシンとして約6mg補給できます。ワンパルは1600mlで1日に必要とされる熱量、アミノ酸、ビタミン及び微量元素を補給できる輸液になっているので、ワンパル(1号2号とも)1600mlで約6.6mg摂取できるようになっています。
ここに記載がない場合でも、ピリドキシン塩酸塩×0.82でピリドキシン量が算出できます。
まとめ
・ビタミンB6は、輸液にはピリドキシン塩酸塩として含有している。
・食事摂取基準、FDA2000処方ではビタミンB6量はピリドキシンとして設定されている。
・ピリドキシン塩酸塩×0.82=ピリドキシン量
他ページにてほかの栄養素についても記載していますのでご覧ください。
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