高カロリー輸液のみで栄養を補給している場合、食事でいえば何mg、μgのビタミンが摂取できているのか知りたいと感じることもあると思います。そこで、輸液におけるビタミンB12はどれにあたるのか、輸液のビタミンB12の基準量はいくらなのか、実際に使われている高カロリー輸液には何mg含有されているのか紹介していきます。
高カロリー輸液【ビタミンB12】は何μg?
高カロリー輸液の添付文書からビタミンB12を探す場合、シアノコバラミンがビタミンB12にあたります。
エルネオパNFには2000mlで5.0μg含有しています。
輸液のビタミンB12量は何が基準?
輸液のビタミン量の基準は、2000年にFDA(米国食品医薬品局)が発出したFDA2000処方が広まっており、これに準拠し作られたものが多いです。また、微量元素に関しては米国のA.S.P.E.N.(米国静脈経腸栄養学会)のガイドラインや、欧州のESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)のガイドラインを準拠し作られていることが多いです。
FDA2000処方ではビタミンB12は5.0μgとなっています。よく使われる高カロリー輸液である、エルネオパNFとワンパルもFDA2000処方に準じたビタミンを配合しています。
ビタミンB12の食事摂取基準
ビタミンB12の推奨量は成人男性、女性ともに70歳以上で2.4μgです。
食事摂取基準では、ビタミンB12はコバルトを含有する化合物であり、「アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、スルフィトコバラミン、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン」がありますが、食事摂取基準の数値はシアノコバラミン量として設定されています。輸液と同じですね。
ビタミンB12の吸収は特徴的
ビタミンB12は胃液から内因子が分泌され、十二指腸でビタミンB12+内因子で複合体をつくります。この複合体は特異的受容体により細胞内に取り込まれ、輸送たんぱくに結合して血中に入り、肝臓に3-5年分は貯蔵されて各組織で利用されます。
このように内因子を介した特異的な吸収機構であること、多量のビタミンB12が腸肝循環しているため、健康な成人で推定平均必要量の評価はできません。そこでビタミンB12欠乏症(悪性貧血)患者の研究データを用いています。
ビタミンB12の必要量の検討
- 悪性貧血患者にビタミンB12を筋肉注射する
- 1.4μg/日で改善がみられる → 1.5μg/日程度が悪性貧血患者の必要量であろうと推定する
- 悪性貧血患者は胆汁中に排泄されたビタミンB12を再吸収できないのでその損失量を引く(0.5μg/日)(健康な人は再吸収できるので、損失量を引くことで正常な腸管吸収能力のある人の必要量が出せる)
- 1.5μg/日 – 0.5μg/日 = 1.0μg/日
- ビタミンB12の吸収率を考慮する(50%)
- 食品からの推定平均必要量は2.0μg/日となる
- 推奨量は1.2倍なので2.0μg/日 × 1.2 = 2.4μg/日 となる
→欠乏している人にビタミンB12を入れて、必要であった量を導き出しています。これを健康な人へ当てはめています。
また、ビタミンB12は内因子を介した吸収機構が飽和すれば食事から過剰に摂取しても吸収されないため、過剰症は認められておらず、耐容上限量は設定されていません。更に詳しく知りたい方はこちらを参照してみて下さい。
ビタミンB12の欠乏症
巨赤芽球性貧血、脊髄及び脳の白質障害、末梢神経障害など
ビタミンB12の過剰症
多量にシアノコバラミンを投与しても認められていません。(胃の内因子で吸収量が調節されているので、多くとっても吸収されない)
さらに詳しく知りたい方は、以下のリンクから日本人のための食事摂取基準2020年度版をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
それぞれの輸液の内容量
ここでは、高カロリー輸液のエルネオパNFとワンパルのビタミンB12量を表にしました。
エルネオパNF1号1000 | エルネオパNF1号1500 | エルネオパNF1号2000 | エルネオパNF2号1000 | エルネオパNF2号1500 | エルネオパNF2号2000 | |
ビタミンB12 (シアノコバラミン) (μg) | 2.5 | 3.8 | 5 | 2.5 | 3.8 | 5 |
ワンパル1号 800 | ワンパル1号 1200 | ワンパル2号 800 | ワンパル2号 1200 | |||
ビタミンB12 (シアノコバラミン) (μg) | 5 | 7.5 | 5 | 7.5 |
エルネオパNFは、2000mlで各種栄養素が補給できる計算になっているので、エルネオパNF(1号2号とも)2000mlでビタミンB12が約5μg補給できます。ワンパルは1600mlで1日に必要とされる熱量、アミノ酸、ビタミン及び微量元素を補給できる輸液になっているので、ワンパル(1号2号とも)1600mlで10μg補給できます。
まとめ
・ビタミンB12は添付文書でシアノコバラミンで表記されている。
・食事摂取基準もシアノコバラミン量がビタミンB12量として設定されている。
・FDA2000処方のビタミンB12は5.0μgである。
以上のようなことが分かりました。患者様の輸液管理に役立てば幸いです。他ページにて、他の栄養素についても記載していますので、ご覧下さい。
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