ホーム » 輸液ービタミンEー » 高カロリー輸液【ビタミンE】は何mg?食事摂取基準と合わせて詳しく解説!

高カロリー輸液【ビタミンE】は何mg?食事摂取基準と合わせて詳しく解説!

輸液ービタミンEー

 高カロリー輸液のみで栄養を補給している場合、食事でいえば何mgのビタミンが摂取できているのか知りたいと感じることもあると思います。そこで、輸液におけるビタミンEはどれにあたるのか、輸液のビタミンEの基準量はいくらなのか、実際に使われている高カロリー輸液には何mg含有されているのか紹介していきます。

高カロリー輸液【ビタミンE】は何mg?

  高カロリー輸液の添付文書からビタミンEを探す場合、トコフェロール酢酸エステルがビタミンEにあたります。

エルネオパNFには2000mlで10mg含有しています。

トコフェロール酢酸エステルとは

トコフェロール酢酸エステルとは、α―トコフェロールを酢酸エステル化して得られる合成ビタミンEのことです。血液や組織に存在するビタミンEの大部分がα―トコフェロールであるため、食事摂取基準のビタミンE量はα―トコフェロール量のことを指しています(ビタミンEには8種類の同族体が知られています)。

 トコフェロール酢酸エステルは、α-トコフェロールの 6 位の水酸基がアセチル化されており、空気中では酸化を受けず、食品中で遊離トコフェロールのような抗酸化作用を有しない。そのため、食品への酸化防止剤としての使用はなく、栄養強化(ビタミンE源)の目的で使用される。摂取された d-α-トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロール酢酸エステルは、消化管内で加水分解され、α-トコフェロールとなり小腸から吸収される。吸収されたα-トコフェロールは、体内で抗酸化作用を示し、過酸化脂質の生成を抑制して物質の代謝に重要な役割を果たす。

d-α-トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロール酢酸エステルの食品添加物の指定に関する添加物部会報告書

輸液のビタミンE量は何が基準?

 輸液のビタミン量の基準は、2000年にFDA(米国食品医薬品局)が発出したFDA2000処方が広まっており、これに準拠し作られたものが多いです。また、微量元素に関しては米国のA.S.P.E.N.(米国静脈経腸栄養学会)のガイドラインや、欧州のESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)のガイドラインを準拠し作られていることが多いです。

 FDA2000処方ではビタミンEは10mgとなっています。よく使われる高カロリー輸液である、エルネオパNFワンパルFDA2000処方に準じたビタミンを配合しています。

ビタミンEの食事摂取基準

 食事摂取基準ではビタミンEの目安量成人男性で6.5mg成人女性で6.0mgとなっています。

目安量

 ビタミンEに関する研究データは十分ではないため、日本人の摂取量から目安量が設定されています。

日本人のビタミンEの摂取量と血中α―トコフェロール濃度

①健康な日本人を対象としてα―トコフェロールの血中濃度と摂取量を測定した報告

 全ての集団で血中α―トコフェロール値が平均22μmol/L以上その人ビタミンEの平均摂取量が5.6~11.1mg/日

②平成 28年国民健康・栄養調査のビタミンEの摂取量の中央値

男性 6.1〜6.7 mg/日、女性 5.8〜6.7 mg

①と②のビタミンEの摂取量は値が近く、現在の日本人の摂取量程度を摂取していればビタミンEの栄養状態に問題がないだろうと考えられ、平成 28 年国民健康・栄養調査における性別及び年齢区分ごとの摂取量の中央値を基に目安量を設定されています。

haru
haru

日本人が摂取しているビタミンE量1の中央値が目安量になっているということですね。

欠乏症

 不妊、脳軟化症、肝臓壊死、腎障害、溶結性貧血、筋ジストロフィーなどの症状があります。

過剰症と耐容上限量

 ビタミンEを過剰に摂取すると、「出血傾向の上昇」があるといわれています。

 健康な成人男性(平均体重62.2㎏)においては800mg/日のビタミンEを28日間摂取しても過剰症の症状は見られなかったため、健康障害が発生しないビタミンE量を800mgとして、それぞれの性別や年齢の参照体重に合わせて耐容上限量が算出されています。

日本人の食事摂取基準2020年度版
haru
haru

通常の食品からの摂取においてビタミンEの欠乏症や過剰症は発症しません。

ビタミンEの食事摂取基準量

日本人の食事摂取基準2020年度版

さらに詳しく知りたい方は、日本人の食事摂取基準2020年度版をご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

それぞれの輸液の内容量

ここでは、高カロリー輸液のエルネオパNFワンパルビタミンE量を表にしました。

 エルネオパNF1号1000エルネオパNF1号1500エルネオパNF1号2000エルネオパNF2号1000エルネオパNF2号1500エルネオパNF2号2000
ビタミンE(mg)
(トコフェロール酢酸エステル)(mg)
57.51057.510
 ワンパル1号 800ワンパル1号 1200ワンパル2号 800ワンパル2号 1200
ビタミンE(mg)
(トコフェロール酢酸エステル)
57.557.5

エルネオパNFは2000mlで各種栄養素が補給できる計算になっているので、エルネオパNF(1号2号とも)2000mlでビタミンEは10mg補給できます。ワンパルは1600mlで1日に必要とされる熱量、アミノ酸、ビタミン及び微量元素を補給できる輸液になっているので、ワンパル(1号2号とも)1600mlで10mgとなっています。FDA2000処方のビタミンEは10mgです。

まとめ

・輸液の添付文書において、ビタミンEはトコフェロール酢酸エステルで記載されている。

・ビタミンEのFDA2000処方は10mg、食事摂取基準の目安量は成人男性で6.5mgである。

・エルネオパNFとワンパルのビタミンE量はFDA2000処方に準じている。

以上のことが分かりました。患者様の輸液管理に役立てば幸いです。他ページに他の栄養素についても記載していますので、ご覧下さい。

高カロリー輸液の【ビタミンA】配合量は?食事摂取基準と合わせて詳しく解説!
栄養士が輸液を確認する時、ビタミンAを確認すると、ビタミンA単位と書かれています。栄養士はビタミンAはレチノール活性当量で考えるので、レチノール活性当量に当てはめるといくらになるのか?添付文書だけではわかりにくいため、栄養士が分かりやすいmgやgで認識できるようにしました。
高カロリー輸液【ビタミンD】は何μg?食事摂取基準と合わせて詳しく解説!
栄養士が輸液を確認する時、ビタミンDはコレカルシフェロールです。それぞれの栄養素が輸液にどれくらいの量入っているのか、添付文書だけではわかりにくいため、栄養士が分かりやすい単位で確認できるようにしました。
高カロリー輸液【ビタミンK】は何μg?食事摂取基準と合わせて詳しく解説!
栄養士が輸液を確認する時、ビタミンKはフィトナジオンです。それぞれの栄養素が輸液にどれくらいの量入っているのか、添付文書だけではわかりにくいため、栄養士が分かりやすい単位で認識できるようにしました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました