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モル(mol)からmg、μgに変換!高カロリー輸液のヨウ素(I)は何mg?食事摂取基準と合わせて詳しく解説!

輸液ーI(ヨウ素)ー
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輸液の微量元素は基本的にモル(mol)で記載されています。ここでは、molからmgへ変換する方法(Znはμmolなのでそこから計算します)と、実際の高カロリー輸液(エルネオパNFやワンパル)には何mg、何μgのヨウ素(I)が含有されているのか紹介していきます。また、ヨウ素という栄養素は日本人に特異的な点がある栄養素でもあります。 今回はヨウ素という栄養素自体についても食事摂取基準を引用しながら説明したいと思います。

モル(mol)からmgに変換!高カロリー輸液のヨウ素(I)は何mg?

  まず輸液の添付文書を確認します。ヨウ素は元素記号ではI(ちなみに分子量は126.9)なので、Iの欄を確認します。エルネオパNFを例に上げると、2000mlで1μmolと記載されています。

molからmgへ単位変換する

手順は以下の通りです。ヨウ素以外の微量元素は食事摂取基準では、mgで表記されますが、ヨウ素はμgです。

① μmol → mol へ変換する

② mol → mg へ変換する

③ mg  → μg へ変換する

①μmol → mol へ変換する

    μmol ⇔ mol
 1000000μmol = 1mol
    1μmol = 0.000001mol 

エルネオパNF1000mlを例に考えてみましょう。

 エルネオパNF1000mlでIは0.5μmolです。まずμmolをmolに変換します(①の式)

0.5μmol = 0.0000005mol

エルネオパNF1000mlではIは0.0000005molであるということがわかります。ここからいよいよmolをmgへ単位変換していきます。

2. mol → mg → μg へ変換する

以下の式に当てはめて、mol(モル)→mgへ変換していきます。

モル(mol/L)をグラム(g)に変える式 

モル(mol/L)をミリグラム(mg)に変える式


溶液1L中の溶質のg数 = mol/L × 溶質の分子量

溶液1L中の溶質のg数 = 0.0000005mol × 126.9(ヨウ素の分子量)

           = 0.00006345g
           = 0.00006345g × 1000(g→mgへ変換)
           =0.0635mg
           =0.0635mg ×1000(mg→μgへ変換)
            =63μg

エルネオパNF1000mlで約63μgのヨウ素(I)が摂取できるということですね。

エルネオパNFは2000mlで1日の栄養素がとれるように作られているので、エルネオパNF2000mlで考えると、127μgのヨウ素(I)が体内に入ることになります。

輸液のヨウ素(I)量は何が基準?

輸液の微量元素量は基本的にESPENのガイドラインまたは、A.S.P.E.N.のガイドラインが基準になっています。ESPEN2009ではヨウ素(I)は100μgとなっています。エルネオパNFもワンパルもESPENのガイドラインに準じたヨウ素(I)量としています。

食事摂取基準のヨウ素(I)の推奨量

 食事摂取基準ではヨウ素(I)の推奨量は、男女ともに18歳以上で130μgとなっています。耐容上限量は3mgとなっています。耐容上限量に関しては日本人特有であり、以下に説明します。

日本人とヨウ素(I)の関係

 ヨウ素の食事摂取基準の推定平均必要量は欧米の研究結果に基づいて算出されています(日本人において有用な報告がないため)。しかし、日本人のヨウ素摂取量は特異的に他国より多いそうです。

ヨウ素は海藻類、特に昆布に高濃度で含まれるため、日本人は世界でもまれな高ヨウ素摂取の集団です。日本人のヨウ素摂取量を検討すると、平均で1日に1.2mgのヨウ素を摂取していると推定されます。

海藻などあまり含まない食事からのヨウ素(500μg)+ 時々食べる海藻類の食事
=平均1~3mg/日

ヨウ素を過剰摂取するとどうなる?

 日常的にヨウ素を過剰摂取すると → 甲状腺の機能が低下する

アメリカ・カナダの食事摂取基準は、連日1.7mg/日のヨウ素を摂取した人に甲状腺機能低下が生じることから、耐容上限量を1.1mg/日に設定している。実際、中国やアフリカでは、飲料水からの1.5mg/日を超えるヨウ素摂取が甲状腺腫のリスクを高めている。

日本人の食事摂取基準2015年度版、ヨウ素、耐容上限量の設定方法

ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺でのヨウ素の有機化反応が阻害されるが、甲状腺へのヨウ素輸送が低下する“脱出(escape)”現象が起こり、甲状腺ホルモンの生成量は正常範囲に維持される。日本人の場合は、ヨウ素摂取の形態が極めて特異的であり、恐らく脱出現象が成立し、ヨウ素過剰摂取の栄養を受けにくいと考えられる。

日本人の食事摂取基準2015年度版、ヨウ素、耐容上限量の設定方法

日本人は海藻を他国より多く摂取するため、ヨウ素を多めに摂取しても甲状腺機能が低下したり、甲状腺腫の発症は極めて稀と言われています。

北海道住民を対象とした疫学調査では、尿中濃度から10mg/日を超えるヨウ素摂取があると推定できる集団では、甲状腺機能の低下の発生率が上がるという調査があるそうです。

しかし海藻類を食べない集団ではヨウ素の摂取量は平均73μg/日程度であるという報告もあり、海藻を継続的に食べない場合はヨウ素不足につながる可能性があります。なんでも適量が大切ということですね。そして日本人はヨウ素に関しては他国より多少多めに摂取しても、健康被害が出ることは少ないということですね。詳しく知りたい方は以下のURLにある食事摂取基準をご覧ください。

食事摂取基準 2020年度版

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586568.pdf

高カロリー輸液のヨウ素(I)含有量

 高カロリー輸液であるワンパル(陽進堂)とエルネオパNF(大塚製薬)のヨウ素(I)の含有量は以下の通りです。

 エルネオパNF1号1000エルネオパNF1号1500エルネオパNF1号2000エルネオパNF2号1000エルネオパNF2号1500エルネオパNF2号2000
I(μmol)0.50.7510.50.751
I
(mol)
0.00000050.000000750.0000010.00000050.000000750.000001
I
(g)
0.000063450.0000951750.00012690.000063450.0000951750.0001269
I
(mg)
0.06350.09520.12690.06350.09520.1269
I
(μg)
63.4595.18126.9063.4595.18126.90
 ワンパル1号 800ワンパル1号 1200ワンパル2号 800ワンパル2号 1200
I(μmol)0.50.750.50.75
I
(mol)
0.00000050.000000750.00000050.00000075
I
(g)
0.000063450.0000951750.000063450.000095175
I
(mg)
0.06350.09520.06350.0952
I
(μg)
63.4595.1863.4595.18

エルネオパNFは、2000mlで各種栄養素が補給できるよう設計されているので、エルネオパNF(1号2号とも)2000mlでヨウ素:127μg含有しています。ワンパルは1600mlで1日に必要とされる熱量、アミノ酸、ビタミン及び微量元素を補給できる輸液になっているので、ワンパル(1号2号とも)1600mlで127μgとなっています。

まとめ

ヨウ素(I)のmol→mgの変換方法についてまとめました。上記の方法を使えば、他の輸液や微量元素補給でも計算することが可能です。輸液にどれだけヨウ素(I)が入っていたんだったっけ?と確認するときの参考になれば幸いです。

他の栄養素についても違うページに記載していますので、ご覧下さい。

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