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【簡単!】嚥下食(プリン、ソフト、ムース食)の作り方 ~在宅・施設・病院どこでもすぐに作れる~

嚥下
Chef adding the final flourish by adding some liquorice flavoured parsley to the dish. The dish is, pan fried pink duck breast onto a bed of parsnip puree with seasonal autumn vegetables and berries. Colour, horizontal with some copy space, photographed on location in a restaurant on the island of Møn in Denmark.

近年、嚥下食の研究開発が盛んであり、嚥下機能が低下しながらも、食事を工夫することで、口から食べ続けることができる高齢者が増えてきています。

今回は、私が実際に作ってみたムース食(プリン食、ソフト食)のなかで、もっとも簡単で食べやすいと感じた嚥下食の作り方を紹介します。

この方法で大抵の料理はムース食にすることができ、誰が作っても同じ完成度になります。

急遽プリン食の提供が必要な場合などにも役立つのではないかと思います。在宅でつくりたい、病院・施設でマンパワーが足りない、ムース食を試行錯誤する時間すらない、など嚥下食提供へ問題を抱えている方へ参考になればと思います。

嚥下食(嚥下調整食)、ソフト食、ムース食、プリン食について

 ソフト食(ムース食、プリン食)は、嚥下調整食(嚥下食)の1種です。

嚥下食(嚥下調整食)とは

嚥下食は、摂食・嚥下障がい者が安全に食事を摂取できるように、物性や食形態を工夫した食事のことです。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では、嚥下調整食分類という嚥下のレベルにあわせた食事の分類と、とろみの分類が示されたものがあります。

https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?0917

ソフト食、ムース食、プリン食、違いはあるか

 これらの食事の名称については、学会などで明確に決められたものはなく、それぞれの病院、施設によって呼び名や食形態が若干違う程度です。
 そのため名称については気にしなくてもよいですが、それぞれの病院、施設の嚥下調整食(ソフト食、ムース食、プリン食)が、学会分類コードの何に当てはまる形態であるかは大切であるため、理解しておく必要があります。

嚥下食(プリン、ソフト、ムース食)作成の問題点

実際に嚥下食を作る時には、色々な問題に直面します。

 ・水で薄めることで、量が増える
 ・作った人によって、物性に差がでる
 ・料理によって物性に差がでる
 ・調理工程が煩雑である

上記のような、問題が発生します。病院・施設では通常の給食提供ですら、日々とても大変なため、さらに嚥下食を試作し、提供することは、なかなか大変なことであります。

 水で薄めることで、量が増える

 ソフト食やムース食は、調理した料理をミキサーにかけて、とろみ剤などを入れて、成形することが多いです。

食べてほしい1人前の量に水を入れて、ミキサーにかけると、料理の味が薄くなるし、全体量が多くなってしまいます。

嚥下調整食を食べられている方は、たくさんは食べられないことも多いため、水で全体量が増えることで、摂取できる栄養量が減ってしまう可能性があります。

また、味が薄くなることで、さらに食事摂取量が減ってしまうこともあります。

作った人、料理の種類によって、物性に差がでる

 ソフト食などは、ミキサーにかけてから、形を作ります。そのため、料理の水分量や食材の種類、たんぱく質量によってとろみ剤の必要な量が変わってきます。

前回と同じように作ったのに、「今日はまとまりが悪く、固まらない」ということもあります。嚥下食は嚥下機能に障害がある方が召し上がられるため、物性はとても大切であり、作った人によって、差が出ては困まります。

工程が煩雑である

誰が作っても同じソフト食が提供できるように、それぞれの料理への指示書を準備することもできます。

「この料理では、このとろみ剤Aを使用して、料理100gに対して〇g、、」
「この料理ではとろみ剤を入れた後に加熱し、成型して冷却、、」


など、1つずつ指示書を出すことはできますが、調理工程が煩雑になり、調理従事者の負担が大きくなります。
病院や施設の調理では、すでに色々な食種と食形態があるため、さらにこの業務が増えると、とても大変です。

簡単なムース食(プリン食、ソフト食)作成方法

 私自身、なかなか安定したムース食(ソフト食)の提供ができず、悩んでいたところ、スベラカーゼというフードケアさんが出されているとろみ剤の関連サイトで、スベラカーゼ粥:おかず=1:1で学会分類2013のコード2-1の嚥下食が作れるというものを発見しました。介護食シェフさんが考案されており、「え、こんな簡単にできたら、すごくいいけど、、」と思い試してみることにしました。

スベラカーゼとは

 フードケアさんが販売されている、ミキサー粥などのベタツキを分解することによって、付着性が改善されて、食べやすくなるとろみ剤です。大抵の病院や施設のミキサー粥には、このようなでんぷん分解酵素の入ったとろみ剤を使用されており、べたべたせず、つるんと食べられるお粥に仕上げてくれるとろみ剤の一種です。スベラカーゼ、スベラカーゼLiteなどあり、スベラカーゼLiteの方が安価です。私の職場ではスベラカーゼLiteを使用していますが、スベラカーゼとの違いをあまり感じたことはありません。

スベラカーゼ | 株式会社フードケア
スベラカーゼ | 神奈川県の橋本にある介護食品メーカーのフードケアです。確かな開発力で、介護食、嚥下食、治療食の分野に価値のある商品をお届けします。咀嚼補助食品から嚥下補助食品まで幅広いジャンルの商品をラインナップしております。

作り方

 

  1. スベラカーゼのお粥をつくる(75℃以上のお粥にスベラカーゼを1-2%混ぜる)
  2. 好きなおかずを準備する
  3. スベラカーゼ粥:おかず=1:1でミキサーにかける(ブレンダーでも〇)
  4. 型に入れてしばらく待つ(冷蔵に入れると固まりやすい)
  5. お皿に盛りつけて完成

作り方は上記の通りで、スベラカーゼ粥:おかず=1:1 おかずが100gならスベラカーゼ粥を100g入れてミキサーやブレンダーにかけるだけです。できたものを型にいれてしばらくすると、ムース食の形態になります(冷蔵に入れるとより固まりやすい)。これを温蔵庫(65℃)に入れても溶けたりせず、物性が変わることなく、きれいな形を維持します。
施設などで、ミキサー食のお粥にスベラカーゼを入れて提供しているのであれば、スベラカーゼ粥を多めに作って、ムース食にも使用することができます。

また、スベラカーゼ粥はご飯から作ることもできます。ご飯を温めて、熱湯とスベラカーゼを入れることでもスベラカーゼ粥を簡単に作ることができます(チンご飯100g+熱湯200g+スベラカーゼ4.5g ごはん1:熱湯2とし、ごはんと熱湯の合計に1-2%のスベラカーゼを入れる)。
 私はこの方法で、一通りの献立を作ってみましたが、どの料理もきれいなプリンやムースのような形態に仕上がりました。

ムース食

ややムース状になりにくい料理

 この方法でどの料理も、同じような物性で簡単にムースを作ることができましたが、人によってやや成形しにくい料理もあったので紹介します。

生酢 : 生食の野菜類はうまく成形できても、生酢は時々できないことがあった
汁物 : 形成できるが、水分が多いため、ややプルプルする

対処法

 成形がうまくいかない料理があった時は、それらを鍋に入れてしっかり加熱してから、型に入れて冷却すると、きれいに成形できました。

 スベラカーゼの酵素は75℃以上で反応するため、スベラカーゼの力をしっかり発揮できるような温度帯へすることで成形します。おかずと混ぜることで塩分が入ることで沸点が上がります。そのため、75℃とはいってもそれ以上にしっかり温度を上げるようにしました。また、単純に水分がとぶことで固まりやすくなるのかなとも考えています。

スベラカーゼ粥でムース食(ソフト食)を作るメリット

  • 物性が均一化しやすい
  • トロミ量を逐一変える必要がない
  • 水で薄めてミキサにかけなくてよい
  • スベラカーゼ粥は冷凍もできる

物性が均一化しやすい

 この方法でムース食を作ると、どの料理でも同じような物性、形態にできるので、安心して提供できます。

トロミ量を逐一変える必要がない

 これまで、「この料理は〇gのとろみ」と使用量の指示や、「この料理は〇〇という種類のとろみ剤」ととろみ剤の種類を使い分けたりして調理工程がとても煩雑でした。

そして煩雑ながら頑張って作っても、形態にばらつきがでたり、成形できないこともあって大変でしたが、「おかずと同量のスベラカーゼ粥」と決まっているので、どの調理員さんでも理解でき、標準的なムース食をつくることができました。

水で薄めてミキサにかけなくてよい

 ムース食はミキサーにかけ、とろみ剤をいれて成形しますが、水の代わりにスベラカーゼ粥をいれてミキサーにかけるので、水でミキサーにかけると、量が増えるだけでエネルギーは増えませんが、そこをお粥に変えることで、少しばかりエネルギーが付加できます。
 また、どちらでも味が薄くなることには変わりませんが、日本人はご飯とおかずを一緒に食べる傾向があるため、味見をしてみても違和感がありませんでした。

スベラカーゼ粥は冷凍もできる

 スベラカーゼ粥は、熱いお粥にスベラカーゼを入れるだけで簡単に作ることができますが、お粥を作る習慣のない家庭でも、ご飯+熱湯+スベラカーゼで作ったり、一度にスベラカーゼ粥をたくさん作って冷凍保存することもできます。
 在宅でムースを提供する場合にはスベラカーゼ粥をたくさん作って冷凍しておいて、上記の方法でムース食を作って提供することも可能だと思います。

スベラカーゼ粥でムース食(ソフト食)を作るデメリット

 デメリットは、おかずの半量をお粥にしてしまうので、糖質量が増えることと、全体量を変えないのであれば、副食量が半量になってしまうことです。(おかずが100gならおかず50g+お粥50gの提供になる)また、水でミキサーにかける時と同様に味が少し薄まるという点もあります。

改善のポイント

糖質量が増える、副食量が減る

 提供する主食の量を減らす。食べられる方に提供するお粥の量が仮に、いつも300gであれば、この300gをそれぞれの献立に振り分けます。生姜焼きのムース食に70g、おひたしに50g、、と振り分ければ、全体量を大きく変えずに提供できます。しかし、食事をどれだけ食べたか、主食〇割、副食〇割などカルテなどに記載する場合に問題が生じる可能性もあります。

副菜量が半分になってしまう

 副食が半量になることで、たんぱく質量やビタミンなどの必要量が確保できない場合は、プロテインなどを使用して、全体量を増やさずにたんぱく質を確保したり、ビタミン、微量元素が摂取できる補助食品の付加を検討してみてもよいかもしれません。

味が薄まる

 薄味と感じる様なら調味料を追加する。副食が半量である時点で調味料も半量なので、調味料を少し足して味を濃くすることができます。しかし、作って味見をした実感として、味が薄いと感じることは少なかったです。

運用方法(どうすれば調理従事者さんに作ってもらいやすいか)

 私たちが実践してみた時は、エクセルで、何人の人がムース食を食べるのか入力すると、献立ごとにおかずとスベラカーゼ粥をどれだけいれると良いかわかるようにして、調理員さんが一目見れば作れるようにしました。


 これをメニュー分つくれば、毎朝人数を入力するだけで、これを見ながら調理員さんに作成してもらえます。

まとめ

 病院や施設などで、持続的にこの方法でムース食を提供するには、栄養面でまだまだ改善が必要です。しかし、ひとまず簡単にムース食を提供したい場合は、誰にでも簡単に同じ物性のムース食(ソフト食)が作れるのでオススメです。そしてどれを味見してみても案外薄くなく、美味しく食べられます。
 在宅でヘルパーさんや家族がムース食を作りたいと思った時にも、スベラカーゼさえ購入すれば簡単に作ることができます。また、めったにムース食を食べられる方が来られない病院や施設でも、その時だけこの方法で対応し、プロテインや補助食品で補うということもできると思います。
 料理によってとろみ剤や調理工程の変更がないので、調理員さんに受け入れてもらいやすいです。
 日々、実践・研究して栄養量も物性も完璧!というプリン食を作成できれば良いのですが、常にマンパワーが足りない、試行錯誤する時間すらない、高齢の調理員さんが多く、複雑にすると嫌がられたり、ミスが増えるなどの問題があることも多いと思います。そのような場合には、ひとまずこの方法でやってみるというものよいのではないかと思っています。

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